3.11 考える その2

2011.3.11 10年

東日本大震災から10年が経ちました。高校生の皆さんにとって、どのような出来事だったのでしょうか。10年を迎え、様々な報道に接し、当時のこと、あれからの10年を振り返る機会でした。学びとミライの視点で、2つの記事を2回に分けて紹介します。第2回は、原発事故以後、福島県で医療支援を続けていらっしゃる坪倉正治先生のブログ「坪倉先生の放射線教室」をご紹介します。

坪倉先生の放射線教室

坪倉先生(福島医大放射線健康管理学講座主任教授、相馬中央病院などに勤務)は、原発事故以後、福島県で医療支援・内部被ばく検査を続けていらっしゃいます。

 

 

福島で医療活動を続けながら、100本以上の論文を執筆し、その一方で、福島の住民と共に県内各地域の課題解決に取り組み、県内外で放射線の健康影響に関する講演や勉強会も継続されてきました。坪倉先生が、福島に関わることになった経緯や、その後のご活躍は、マスコミでも頻繁に取り上げられています。【医師の10年 東日本大震災】確かなデータ、健康守り続ける 坪倉正治さん(39)(産経新聞 2021年3月8日 東日本大震災 それぞれの10年)福島の生活に役立つ「科学の言葉」を探す 坪倉正治氏インタビュー (SYNODOS 2019年1月15日)

 

坪倉先生が、福島の地元紙 福島民友に執筆されているブログ「坪倉先生の放射線教室」では、放射線についてわかりやすく、丁寧にご説明をされています。この内容をMRIC Global(医療ガバナンス学会運営の英文ブログ)が英訳をしており、日本語と英訳が、毎週メルマガ(注)で手元に届きます。放射線に関する知識、放射線が健康に与える影響を、科学的なデータに基づいて、わかりやすく説明されていて、とても勉強になります。ついでに、英語の勉強にもなります。

(注)メルマガの申込は、JMM(村上龍さんが編集長のメールマガジン)で行えます。

何が真実か

福島原発事故については、現在高校生のみなさんにとっても、記憶に残る出来事と思います。日本全国、世界中が緊迫した時間でした。あの時、政府が発表する情報、報道機関の情報、twitterやFacebookにあふれる情報、何が真実なのか、何を信じればいいのか、悩みました。TVで報道される映像を固唾をのんで見つめながら、何を信じればいいのか、一人ひとり考えた時間ではないでしょうか。自分で信じることのできる情報を探しだして、自分で考えるしかない。そのような行動が少し身についた経験だったと思います。

 

データというより言葉に近いもの

坪倉先生は、インタビューの中で、「科学的なデータは、多かれ少なかれ誰かを傷つけるものだ」ということを忘れないでいようと思っています。心がけてきたのは、「地域で集めたデータを地域に役立てる」ということです。(住民が納得感を持って生活するのに役立つデータはどのように見つけているのでしょうか?という質問に対して)ぼくたち自身が地域にしっかり腰をおろして、一人ひとりと日常的に接していないと見つからない、「データ」というよりは「言葉」に近いものだと思っています。」とおっしゃっています。

生きていく上で科学を学ぶ意味を、3.11の機会に改めて振り返りました。

 

 

文責:学問ノススメ 大井安治