「激動社会の中の自己効力」アルバート・バンデューラ編、1997年、金子書房

健やかに生きる上で重要な自己効力感

「やればできる」「為せば成る」

大切なテストの前や試合の前、その他緊張するような場面で、鼓舞するために言った経験はありませんか?

そして、このようなフレーズを自分に言い聞かせることで、緊張がすっと抜けて集中できたりします。

不思議な現象だなと思いませんか?

この「やればできる」「為せば成る」と思う感覚のことを、心理学では「自己効力感」(Self -efficacy)と言い、私たちが何か目標にチャレンジしたり、健やかに生きていくために重要な要素だと考えられてきました。

今回ご紹介する本は、「自己効力感」について、概念を提唱したアルバート・バンデューラという心理学者が編纂した書籍です。

 

 

著者について

アルバート・バンデューラ

自己効力感や社会的学習理論で知られるカナダ人心理学者。

カナダのブリティッシュコロンビア大学を卒業後、1952年、アイオワ大学にて博士号を取得。

アメリカのスタンフォード大学の心理学教授を長く務め、1974年には、アメリカ心理学会会長も務めました。

また、2002年の調査では、バラス・スキナー、ジークムント・フロイト、ジャン・ピアジェに続き4番目に多く学術論文での引用をされる心理学者です。

(The 100 Most Eminent Psychologists of the 20th Century:http://creativity.ipras.ru/texts/top100.pdf)

 

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内容と構成

冷戦が終結し、インターネットが普及し始め、社会、経済、技術、文化、情報など多様な面で社会が急激に変化する状況に直面する中、どのように乗り越えていけば良いか、健康心理学の観点から考察されています。

本書は10章から構成されています。まず第1章でバンデューラ自身により、自己効力に関わる主要なテーマが指摘されます。後に続く章でそれらのテーマについて詳細な分析の結果が紹介されています。

目次

1  激動社会における個人と集団の効力の発揮

2  激動社会のなかの人生の軌跡

3  コントロールの信念の発達的分析

4  コントロールの信念に関する家族の影響

5  自己効力における比較文化的視点

6  ストレスフルな人生移行における自己効力

7  自己効力と教育的発達

8  職業選択と発達における自己効力

9  危機行動の変容と健康行動の受容ー自己効力の信念の役割

10 自己効力と中毒行動

 

本書を読んで

1章では、集団としての学校の効力感について述べてられています。そこで、「学習しやすい環境を創造するという課題は、教師の才能と自己効力感に大きく依存している」とあり、ハッとさせられました。教育に携わるものの一人として肝に銘じておきたいと思います。

 

 

(文責:井口)