心理学と勉強法 第44回 自己決定理論

第44回テーマは、”自己決定理論”です。

心理学者のデシとライアンが提唱した自己決定理論では、内発的動機づけと外発的動機づけは完全に分離している訳でも対立するものでもなく、連続的に繋がっているものであると考えました。連続的に繋がっており、変化するという考えです。例えば、最初は言われたからやっていたことでも、段々と意味を見出し、面白く感じるようになった、と言うような行動です。この連続性について次のように4つの段階に分けて整理しました。

 

自己決定理論とは~ランタンより~

 

4つの段階
①.外的調整

報酬や罰によって、仕方なくやっている状態

例:やりたくないけど、怒られるのが嫌だから宿題をする

 

②.取り入れ

他の人から認めてもらうためや、プライドのためにやっている状態

例:テストで悪い点を取るとカッコ悪いと思うから勉強をする

(この段階では、まだ本当に行動が大切だとは思っていない)

 

③.同一化

自分のためになると思ってやっている状態

例:有名大学に行きたいので、受験勉強をする

(目的遂行の手段として行動している段階。それ自体を楽しむという段階には至っていない)

 

④.統合

完全に価値が内在化され、内発的動機に非常に近い状態

例:勉強が楽しいから、受験勉強をする

 

伊藤美誠の旅 ~NHK~

 

卓球の福原愛さん、伊藤美誠さんが、親に進められて卓球を始め、泣きながら努力し(外的調整)、数々の大会で優勝し(取り入れ)、さらに高みを目指すために練習を重ね(同一化)、最終的には卓球自体をすごく好きになっている状態(統合)でしょうか。

 

3つの欲求

この理論における重要な概念は、有能さ・関係性・自律性という3つの欲求を人間は持っていると考えていることです。内発的か外発的かに軸足を置くのではなく、その2つは連続的に変化するものであり、有能さ・関係性・自律性の3つの欲求が満たされることで、動機づけが促進されると考えています。特に重視しているものが、自律性の欲求です。自分自身の意思で自律的に自分の行動を選択したいという欲求です。

 

前回 行動の始発性・自律性で説明したポーン(チェスのコマ)ではなく、オリジン(指し手)の状態になっていることです。次回は、心理学と勉強法 最終回です。

 

【次回(第45回)テーマ モチベーションをコントロールする】