鉄・病原菌・銃(1万3000年にわたる人類史の謎)〜ジャレド・ダイヤモンド
- 2021.03.15 | 書評 未来への学び(遠い未来)
ジャレド・ダイヤモンド「鉄・銃・病原菌」(1万3000年にわたる人類史の謎 )2012年、草思社文庫
1.著書・著者について
グローバルヒストリーという分野をご存知ですか?
歴史研究の一分野で、国や地域を超えて、地球規模で人類の歴史を考える分野です。
ご紹介する本は、グローバルヒストリーの代表作といっても良い著書です。1997年に出版され、ピューリッツァー賞やコスモス国際賞を授賞しました。日本でも2000年に出版され、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位に選ばれました。
著者のジャレドダイヤモンドさんは、アメリカの進化生物学者、生理学者、生物地理学者、ノンフィクション作家です。現在はアメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校社会科学部地理学科の教授をされています。
2. 構成と読みどころ
本書は、「世界に数多くの人間集団がありながら、その中で世界中に広がり、結局は他の人々を征服するまでに至ったのはユーラシア大陸、特にヨーロッパの人々であったのはなぜか」、また、反対に、「それ以外の人々が、ヨーロッパ人を征服することはなかったのか」という問題について、4部、19章に渡り考察されています。
<本書の構成>
第1部 勝者と敗者をめぐる謎
アメリカ先住民がヨーロッパを植民地化したのではなく、ヨーロッパ人が新世界を植民地化したのはなぜなのか?などについてテーマが提示されます。
第2部 食料生産にまつわる謎
つぎに、各地で食料生産が開始される時期が異なることについて、それがどのように生じたのかが論じられます。
第3部 銃・病原菌・鉄の謎
食料生産が、病原菌に対する免疫、文字や技術の発達、集団の形成にどう結びついたのかが考察されます。
第4部 世界に横たわる謎
これまでの考察を元に、人類の歴史が大陸によって異なる理由を理解するための検証がなされます。
全体を通して、鉄・銃・病原菌が文明のあり方とどのように関係しているのか、とても知的好奇心が刺激される内容になっています。
3. 本書をきっかけとして
この著書を読んだ当時、私が思ったことは、歴史的な事実とされていることでも、そこで思考停止せず考え続けることの大切さと面白さでした。
例えば、学校で勉強する歴史は、それを所与のものとして覚えることが重視されます。それも大事なことではありますが、本書のように新たに考察できる余地はあります。
本書を読むことを通じて、歴史に限らず、素朴な「なぜ」を元に物事を考えることの面白さを実感してもらえればと思います。
また、昨年からの新型コロナウィルスの流行に伴い、私たちの思考や生活様式も変化しています。こうした実体験を元に本書を読むと、世界の見え方が変わるかも知れません。
文責:学問ノススメ 井口