感染症の世界史〜石弘之~

「歴史は未来を写す鏡」

過去を振り返ってみると、現在起こっている様々な課題と類似した事柄がたくさんあります。そこから、将来に向け、解決するヒントが得られることがあります。

新型コロナウィルスによる感染拡大とそれに伴う社会の変化は、過去を振り返ることで何か解決のヒントが得られるのでしょうか?

今回紹介する「感染症の世界史」の著者である石さんは次のように述べています。

「ウイルスや細菌といった微生物は昔から地球上に存在しており、彼らとの戦いは今までもずっと繰り返されてきたし、これからもずっと続いていく」

であれば、歴史を振り返ることで今後のライフスタイルを考えるためのヒントが得られるかもしれません。

感染症の世界史

著者紹介

1940年東京都生まれ。 東京大学教養学部卒。朝日新聞社入社。 ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問、東京大学・北海道 大学大学院教授、ザンビア特命全権大使などを 歴 任。 国 連 ボ ー マ 賞、 国連グローバル 50賞、 毎日出版文化賞受賞

ジャーナリスト、研究者として優れた功績を残されています。

構成と読みどころ

本書では、環境史の立場から、身近な感染症について論じられています。

構成は3部、14章です。

「第1部 20万年の地球環境史と感染症」

人類の進化と感染症の拡大の歴史について、紹介されています。

「第2部 人類と共存するウイルスと細菌」

私たちの体に生息する菌の種類について紹介されています。

「第3部 日本列島史と感染症の現状」

麻疹、風疹、結核などの日本人に多い感染症の歴史と現状が紹介されています。

また、それぞれの章の最後には、紹介された感染症に感染した有名人も紹介されており、感染症が私たちにとって身近な存在であることを感じられやすくなっています。

本書を読んで

「微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある。同時に、私たちの生存を助ける強力な味方でもある」というのが人類と感染症との関係です。

そして、本書の最後では『「赤の女王」※との追いかけごっこが今後とも続くだろう』と締め括られており、なくなることはなさそうです。

新型コロナウイルスについては、一時感染者数の拡大が落ち着いてきたかと思われましたが、最近では、変異ウイルスによる感染の拡大が懸念されています。

新年度を迎えましたが、余談を許さない状況が続いている今、感染予防の観点からだけでなく、私たちと環境との関係を見据えた「ニューノーマル」な生活を送る必要があると感じます。

※赤の女王;赤の女王仮説

生物の種は絶えず 進化 していなければ 絶滅 するという 仮説 。 ルイス・キャロル の 小説 『鏡の国の アリス 』に登場する女王 の言葉「同じ場所にとどまるためには、絶えず 全力 で走っていなければならない」を引用した進化 生物 学者リー・ヴァン・ヴァーレンによる 造語 (引用:https://kotobank.jp/word/赤の女王仮説-185542

補足:

なお、本書は昨年図解版も出版されています。そして、図解版では最初に新型コロナウイルスについて、経緯や出版時点での最新情報がわかりやすくまとめられています。

図解感染症の世界史

 

 

(文責:井口)