心理学と勉強法 第22回 領域固有性

心理学と勉強法 第22回

第22回は、領域固有性について説明します。

領域固有的な知識

推論は領域固有的な知識で行われるという考え方があります。抽象的、形式論理的な推論が可能な範囲には、限界があるという立場です。数学Ⅰで勉強するような一般的な論理式・推論を訓練しても、なかなか他の領域でそれが使えるようにはならないという考えです。チェスや将棋の定石しかり、物理学の熟達者がたくさんの問題スキーマや解法手続きの知識を持っていることもその証左です。

修理工が車を直す推論も医師が患者を診断して治療する推論も、形式論理的には同じです。でも、医師が車を修理はできません(できない場合が多いです)

スキーマと推論

私は、この議論は、領域固有的か一般的かの二者択一ではないと考えます。車の修理には、車の設計や機能のメカニズムの知識が必要です。一方で、病気を見抜く鑑識眼ができているプロは、人間の全体システムの一部が不具合の場合、どのような影響を体に与えるのか(症状に現れるのか)、だからどういう処置をすれば不具合(病気)を直すことができるかというスキーマ(修理スキーマと呼びます)は持っているのではないでしょうか。

このスキーマが、車の修理の際には使えない理由は、必要とされる知識構造が、どの程度領域固有的=個別の問題かどうかに関わるのであり、修理スキーマが適用できる場面は、患者の治療はもちろん、それ以外の場面でもあるのではないでしょうか?必要とされる知識構造の内容は、良質な推論ができるか否かを決定します。ただし、自分に根付いた知識・スキーマは、様々な場面での推論に生かすことができるのも、然りということです。

 

一芸はすべてに通じるという言葉があります。イチローが語る言葉はビジネス書で頻繁にとりあげられています。

僕は天才ではありません。なぜかというと自分が、どうしてヒットを打てるかを説明できるからです(イチロー)

プロフェッショナルな方や、尊敬する先輩たちの言葉が、響いたことはないですか?自分のひらめきや気づきにつながった経験はないですか?あなたも、思い出す経験があるのではないでしょうか?

 

 

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