記憶のモデル 短期記憶と長期記憶 ~心理学と勉強法 2023~

記憶のモデル

学問ノススメのブログ 心理学と勉強法の中で、多くの皆さんから興味を持って頂いたブログを隔週で順番に紹介するシリーズです。今回は、「記憶」に関するブログの中で、短期記憶と長期記憶について、紹介します。

短期記憶と長期記憶

認知心理学では記憶を短期記憶(short-term memory)と長期記憶(long-term memory)に分類しています。

短期記憶とは簡単に言えば、今頭の中に意識としてあることです。人の話を聞いているとき、相手がどんなことを言ったのかその場では覚えている訳ですが、後から思い出そうとしても出てこないことがあります。つまり、一時的に意識の中に残っていますが、すぐに忘れてしまうような記憶です。

それに対して、一度意識をしなくなったとしても、また後から思い出せる記憶というのもあります。これが長期記憶です。私たちが多くのことを覚えているのはこの長期記憶の方を指します。

 

コンピューターで、電源が切れてしまっても、保存したデータ(長期記憶)は、あとで読みだせます。保存前の計算(短期記憶)は、電源が急に切れてしまった場合、読み出すことができません。一からやり直しです。

学習とは、必要な短期記憶を長期記憶にすることです。必要な時に長期記憶から呼び出して(検索)、活用することです。受験勉強においては、この取組を効果的にすることが重要です。

 

図 短期記憶と長期記憶

 

受験勉強のテクニックを紹介しているブログや一部の受験塾で、”忘却曲線(注)というのがあってね、1か月後には覚えたことの20%しか覚えていないんだよ(間違いです)、だけど、覚えた翌日までに1回、1週間以内に2回、、そうすることで短期記憶が長期記憶になるんだよ”などと紹介しているような記事を見かけます。

 

キリトリ記事と同じで、心理学実験で科学的に確かであろうと考えられていることを、つまみ食いしただけに過ぎません。人間の記憶の仕組みが、そんな単純なわけがないと気づくと思いますが、効率的な解決策を求めたい気持ちはわかります。じゃあ、どうすればいいかについては、これからのブログで触れていきます。

 

(注)エビングハウスの忘却曲線

 

エビングハウスによる記憶研究(Ebbinghaus, 1885)。彼の実験手続きは,”無意味な綴り”の繰り返し学習によって得られた学習時間の節約率を表したもの。条件を綿密に設計した実験により、記憶された内容が時間経過にしたがってどのような割合で忘却されていくか(正確には、覚えた当初と比較して、思い出すためにどの程度の時間を必要とするかの節約率)を明らかにした。彼の研究では,人の記憶は記憶した直後は急速に減少していくが,その後は次第に緩やかな減少となり,一定時間が経過すると忘却がそれほど進まなくなると主張している。

 

 

今回は、短期記憶と長期記憶という分類があること、記憶は時間の経過と共に失われていくこと、特に無意味な内容の記憶は短期間で失われていくことをお伝えします。そして余談ではありますが、ブログ記事や先生達の説明を自分で考えずに(思考停止)、まったく調べずに(無批判)、うのみにすることの危うさをお伝えします。次回は、記憶のモデル「忘却」について、紹介します。

 

(文責:大井)