本の紹介: 鹿毛雅治著「モチベーションの心理学」「やる気」と「意欲」のメカニズム」(中公新書,2022)

「モチベーション」、その「上げ方」を知る前に

 

「モチベーション」について話題に上がるとき、焦点はその「維持の仕方」や「上げ方」にあるのではないでしょうか?

 

実際にyoutubeやHP・ブログでモチベーションを調べてみると、多くはその維持の仕方や高め方についての情報でした。

 

では、そもそも「モチベーション」とは一体何なのでしょうか?「やる気」や「意欲」と同じなのか、違うとすればどう違うのでしょうか?

 

「モチベーション」という言葉自体は日常的に使われる類の単語だと思いますが、いざそれは何か?と聞かれた場合、案外答えにくいものではないかと思います。

 

そこで、今回は「モチベーション」の心理学について体系的にかつわかりやすく解説された入門書をご紹介したいと思います。

 

 

著者について

鹿毛雅治(かげ まさはる)

教育新聞より

1964年、横浜市生まれ。1986年横浜国立大学教育学部心理学専攻卒業、91年慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻博士課程単位取得退学。1992年同大学教職課程センター助手、95年専任講師、97年助教授をへて、2005年教授。博士(教育学)。専攻・教育心理学

モチベーションの心理学 「やる気」と「意欲」のメカニズム 』より

 

構成

 

第1章・第2章は総論としてモチベーションの代表的な考え方が紹介されます。

第3章〜第6章は各論です。4つのキーワード(「目標」「自信」「成長」「非意識」)によって分類した理論が説明されます。第7章は個人を取り巻く環境について、終章では「モチベーション」と言う概念の意味合いについて筆者の考えが紹介されます。

 

目次

第1章 モチベーションとは何か

第2章 モチベーション理論の展開

第3章 達成と価値―目標説

第4章 成功と自尊心―自信説

第5章 学びと発達―成長説

第6章 習慣と態度―非意識説

第7章 場とシステム―環境説

終章 「モチベーションの心理学」に学ぶ

本書を読んで

筆者は本書の中で、やる気や意欲を高めるための万人に通用する「奇跡的な方法」や「万能の処方箋」はないと述べています。それは我々人間が単純な生き物ではなく、複雑で奥が深いからです。このことについて「十人十色」に対する言葉として「一人十色」という言葉を紹介しています。

 

この複雑な存在である人間を理解するために、さまざまなモデルが考えられ、理論が生み出されてきました。本書を読めばその概要とポイントが掴めると同時に、「モチベーション」について「わかり直し」ができると思います。

 

「モチベーション」について多様な理論が紹介、解説されていますから、高校生や受験生の時期にこの本を読むと、今後幾たびと訪れるだろう困難に出会ったとき、心の支えとなってくれるものと思いました。

 

ちなみに、この「学びとミライ」でも「心理学と勉強法」と言う一連の記事でモチベーションについて10回(第36〜45回)にわたり紹介していますので、ぜひご覧ください。URLはこちら

 

 

(文責:井口)