本の紹介:市川伸一著「勉強法の科学―心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)」(2013)

1.心理学を勉強に活かす

心理学といえば、相手の心を読むというイメージがあるかも知れません。しかし、心理学にもいろいろな種類があります。今回紹介する著作は、人間の脳と心の機能を研究する認知心理学の視点から、人が学ぶメカニズムついて科学的に書かれた本です。

 

どのようなことをするにせよ、我流でやるよりも合理的なやり方の方が上達は早いもの。ここでいう合理的なやり方とは、私たちの脳の機能を踏まえた学習のやり方という意味です。

 

4月に入り、心機一転勉強に頑張って取り組もうと考えている人は、まず私たちが物事を学ぶということはどういうことが頭の中で起こっているのか知ってみませんか?

 

勉強法の科学

 

2.著者について

市川伸一(いちかわしんいち)

市川伸一氏プロフィール画像

 

1953年生まれ.1977年東京大学文学部心理学専修課程卒業.1979年同大学院人文科学研究科修士課程修了(心理学専攻).1980年同博士課程中退.1988年文学博士.埼玉大学,東京工業大学を経て,1994年より東京大学助教授,1999年より教授(大学院教育学研究科教育心理学コース).

 

2019年3月、東京大学を定年退職。東京大学名誉教授。大学院教育学研究科客員教授、帝京平成大学特任教授、帝京大学中学校・高等学校校長補佐。

(HPより転載)

 

3.構成

本書は4つのパートで構成されており、記憶、知識の活用、問題解決、そしてモチベーションについて認知科学の知識の紹介と実際に勉強する時のコツが紹介されています。

また、最後には高校生が抱えるいくつかの典型的な課題についてのアドバイスも掲載されています。

目次の内容について具体的にご紹介した方がイメージが湧くと思いましたので全てご紹介します。

 

はじめに

1 どうすればよく覚えられるか

 一度に思い浮かべられる量を測る――メモリースパン

 「くり返し」の効果と限界――記憶の貯蔵庫モデル

 大きなまとまりをつくる――チャンク化

 意味を理解する――有意味化

 関連をつかむ――構造化

  ◇勉強法に生かすには――丸暗記より理解する学びへ

2 知識はどうとりこまれ,使われるか

 情報をとりこむ――上からと下からと

 言語から命題的表現へ

 図や絵も命題的表象か――イメージ論争

 知識は使うためにある――スキーマによる文章理解

 「常識」のあるコンピュータは,人の話がわかる

  ◇勉強法に生かすには――理解の前提となる基礎知識をチェックする

3 いかにして問題を解くか

 問題理解と解法探索――数学文章題を例に

 文章理解も問題解決――英文解釈を例に

 誤った知識が問題解決を妨げる――物理法則の素朴概念

 正しい知識や経験も邪魔をすることがある――固着と制約

 失敗経験から教訓を引き出す

  ◇勉強法に生かすには――数学は暗記科目か

4 やる気の出るとき,出ないとき

 外からのやる気,内からのやる気――内発と外発

 なんで勉強するの? ――学習動機の2要因モデル

 「やる気が出る/出ない」のしくみ――随伴性認知と実行可能性

 やる気の出し惜しみ――セルフ・ハンディキャッピング

  ◇勉強法に生かすには――自分の学習意欲をどう引き出すか

高校生との質疑応答

 ◆スキーマを意識的に言語化する

 ◆経験を一般化して表現する――レポートの大切さ

 ◆英文解釈が苦手――「作者の言いたいこと」を探る

 ◆辞書を引く前に単語の意味を推測してみる

 ◆やる気を出すコツはあるのか――いろいろな動機づけ理論を参考に

あとがき

 

4.本書の読みどころ

勉強法に関する本は数多くありますが、どの本を選ぶかには注意が必要です。著書による経験談が書かれた本は具体的なDO -HOWが掲載されており、役立つこともあります。しかし、誰にでも応用できるか、というとそうではありません。

その点、本書のような科学的な観点で書かれた本は人間のもつ機能から解説されていますので、特別の事情がない限りにおいて誰にでも当てはまると言えます。そういう意味で本書は単に科目の勉強の仕方についてののアドバイスではなく、広く人間という存在が物事を学ぶ仕組みを体系的に解説されており、世代を問わずまた時間が経っても読み返す価値のある本だと思います。

また、同著者の「勉強法が変わる本-心理学からのアドバイス.岩波ジュニア新書」では、より学校の勉強に焦点を当てたアドバイス、ヒントが掲載されているので、興味を持たれた方は手にとってみるのも良いと思います。

勉強法が変わる本

 

(文責:井口)