ふてほど 2024 流行語大賞

2024年 流行語大賞

12月になりました。秋を飛び越して冬がやって来た感じですが、受験生のみなさんはどうぞ風邪などひかないように過ごしてください。さて、この時期には、流行語大賞、今年の漢字などが発表され、1年を振り返る季節です。流行語大賞は、「ふてほど」。今春のTBSドラマ「不適切にもほどがある」の略称ですが、受賞には異論(聞いたことがない!?、他の候補の方が世相を表している(例:裏金問題やホワイト案件、50-50))も唱えられているようです。

 

 

私は、TVドラマ好きなので、ふてほどを観ていました。このドラマへの感想も含めて、今年の流行語大賞にコメントします。

不適切にもほどがある

このドラマは、宮藤官九郎の脚本で、主人公(阿部サダオ演じる高校教師)が、令和(現在)と昭和60年代をタイムスリップする中で、現在はコンプライアンス違反とみなされる昭和の様々な出来事(パワハラ、セクハラなど)を通して、人として守るべき大切なことは本当は何なのかというテーマをコメデイタッチの中で、視聴者に真剣に問いかけるドラマだと思います。今年度のギャラクシー賞 マイベストTV賞グランプリ(視聴者や放送批評家の投票により選ばれる優れたTV番組への賞)を獲得しています。同賞の視聴者コメントでも、”現在のドラマから失われてしまった自由な面白さがふんだんに盛り込まれていた””笑いと涙の中に寛容な社会であって欲しいというメッセージが込められていた””全世代が思っていても言えなかったことを、地上波を使ってぶちまけてしまう脚本家宮藤官九郎さんの力”などがあがっていました。

 

 

(TBS:不適切にもほどがあるHP)

 

私自身は、同賞の選評の以下のコメントがしっくり来ています。

 

昭和を令和の視点から令和を昭和の視点から、相互批評的に見ることを通して、より生きやすい世の中を模索しようとした志の高いドラマです。タイムスリップによって昭和と令和双方の登場人物たちが自らの生きる時代を見つめ直し、価値観をアップデートしていくプロセスをミュージカルシーンを織り交ぜながら温かく描きました。とりわけテレビ局を舞台に設定することで、SNSなどによる批判や炎上を恐れて萎縮し、当たり障りのない方向へと流されがちな制作現場に対して一石を通した事は特質に値します。

 

JC・JK流行語大賞 2024

JC/JKで流行した言葉をマーケティングリサーチ会社がリサーチした結果(注)を2024年流行語大賞としてまとめた結果も発表されました

 

(AMP:HP)

 

(注)Z世代向けのマーケティング支援などを手がける株式会社AMF(本社:東京都港区、代表取締役:椎木里佳)は、トレンドのリサーチが得意な全国の女子中高生からなるマーケティング集団”JC・JK調査隊”の精鋭メンバーの選考結果をもとに、2024年7月〜11月までのトレンドをまとめた「2024年の流行語大賞」を、「ヒト・モノ・コンテンツ・コトバ」の4部門に分けて発表いたします。

 

この言葉の中では、〇〇界隈という言葉のワードセンスに驚いています。界隈は流行語大賞のトップ10にも選ばれています(注)。

(注)「界隈」の受賞理由は「同じものが好きな人同士でつながって楽しむような意味合いで、『界隈』が使われ始めた。もともとは地理的な範囲で『その辺り一帯』を意味する言葉だったのだが、新しい展開の流行語である。『仲間』とか『近い存在』といった、『共通の人びと』を指すように、『自然界隈』であれば山や川など自然のある場所を好む人たち、『水色界隈』であれば水色のファッションを好む人たち、といったぐあいである。そこからSNSでは『回転界隈』が話題になった。これは楽曲にあわせて、最初は正面を向いている人がその場で90度ずつ回転して、コーディネートの全体像を披露する動画。こういった発展も含めて、若者もおとなも、『○○界隈』を面白がっている姿がみられた。一般の語が、新たな展開で認識され、思わず使いたくなるような語として広まる。これこそが『新語・説明流行語』の醍醐味なのだ」

 

高校生のみなさんには、馴染みの深い言葉でしょうが、地理的な範囲を示す意味であった言葉を、人の関係(仲間や共通性のある人、近い存在)に転用して使うセンス、いつの時代も新しい言葉を生み出す若い力に、驚かされます。平安時代であれば、紫式部や清少納言が、源氏物語や枕草子で残した言葉にもそういう瑞々しさがあったのだと思います。興味をもたれた方は、橋本治さんの枕草子(桃尻語訳 枕草子)を読んでみてください。面白い気づきがきっとありますよ。

 

 

 

 

 

(文責:学問ノススメ 大井 臨床発達心理士 詳しい経歴はコチラ