コロナ、失敗の本質、B’z

ワクチン接種率

コロナワクチン接種率が65%(*)を超えたそうです。河野前ワクチン接種推進担当大臣によれば、接種率は80%を超える見通しとのこと。この勢いが続くと、国民人口が1億人を超えるような国では、最大の接種率を誇る国となりそうです。(*) 10月12日現在の2回接種者。全人口(125百万人)に対する割合。

 

世界のコロナワクチン接種率比較(Our World in Data 10/12/2021より)

 

世界の動き

ワクチン接種で先行していた多くの欧米諸国で、接種率が頭打ちしています。アメリカのバイデン大統領は、ワクチン接種が進まない状況(57%)にいら立ちを見せる記者会見を行いました。連邦政府やデイズニー・Facebookなどの大企業ではワクチン接種を義務化する動きも見られます。ポルトガルは欧州の中では、ワクチン接種率(85%)が一番高い国です。コロナとの戦いを制するため、ワクチン接種のリーダーに軍人(海軍中将)を当て、国民的な運動として成功させたようです。シンガポールも高い接種率(81%)ですが、国民統制が厳しいお国柄や技術立国の特徴がうかがえる手法(ITを駆使した行動管理と厳格な行動制限)で、80%超を達成しています。

 

 

Withコロナに向けて

With コロナに向けての世界の動きも各国様々です。シンガポールでは、10月に入って感染者数は高いレベルにありますが、外国人居住者が多い貿易立国であることを反映して、検査を徹底することで、海外からの入国制限の緩和策を打ち出しています。

 

イギリスは、ワクチン開発に注力しワクチン接種でも先行しました。接種率(67%)は頭打ちしていますが、欧州サッカー選手権の有観客開催などに代表される社会実験を大胆に行ってきました。その結果も踏まえ、感染者が増えている中でも死者が抑えられている状況から、入国制限を緩和し社会活動の制限緩和策も堅持しています。一方で、英国政府のコロナ初期対応(集団免疫の獲得方針など)について、議会の厚生委員会から「史上最悪の公衆衛生上の失敗」とした報告書が公表されています。国として、方針をもって挑み、失敗し、そこから学び、戦略を転換し、大胆な社会実験を先駆的に行い、現在に至っていると私は理解しています。

 

 

このような各国それぞれの動きと日本の状況を見るにつけ、頭に浮かんだことが、「失敗の本質」という本です。1980年代の組織論の代表的な学者たち(野中郁次郎、寺本義也、戸部良一他)による”太平洋戦争での日本軍の敗北を分析した本”で、日本の組織の特徴を分析した内容として、今でも、よく取り上げられています。

私は、今回の日本の対応が失敗だったと考えているわけではありません。日本という国(組織)の特徴が出ている対応であり、その結果としての現状と考えているだけです。

 

 

失敗の本質の中で、”ミッドウエー海戦について、ミッドウェー島の基地をつぶすことが目的か、迎撃してくる敵の機動艦隊を壊滅させることが目的だったのか不明確”で、幹部間で意思統一がなされていなかったという指摘があります。戦争の目的は戦争に勝つことで、議論の余地はないように見えますが、では何をもって「勝ち」とするのか決めておかなければ、個々の作戦でも失敗する可能性があり、大きな戦争には勝てないという指摘です。

 

コロナ感染症においても、コロナに勝つこと、命を救うこと、生活を守ることが叫ばれ続けていますが、何をもってコロナに勝つとするのか、意思統一がされているのかということです。日本全体で、各自治体のレベルで、共通の目標のもと、それぞれの責任を明確に分担して、個々の作戦にとりかかっているのかということです。

 

 

 

コロナとの戦いが始まってから、共通の目標が決定していない中で、関係者が目の前の戦いに懸命に挑んでいる姿が、失敗の本質で指摘されていた日本軍の行動と重なります。「あなたとあなたの大切な人の命を守るための行動」という言葉が、国や自治体のすべてのリーダー、公衆衛生の専門家から、発信され続けています。この抽象度の目標(戦争に勝つ=コロナに勝つ)は叫ばれていますが、何を持って勝ちとするのか(基地をつぶすのか、機動艦隊を壊滅するのか?=感染者をどの程度まで許容するのか?)について、共通の目標はないと思います。

 

そういう中でも、人口大国の中では最大の接種率になりそうな勢いでワクチン接種が進んでいます。日本の特徴が表れています。Withコロナでは、どのような社会生活を目指すのか、共通の目標を持てればいいな!と思います。そのための社会実験をやることも必要だろうと思います(現在、明らかにされている社会実験は、わからないことを確認する意味での実験ではなく、わかっていることをスムーズに実行するための予行演習に過ぎない点が気がかりです)

 

B’zの叫び

 

 

9月下旬に、B’zがミスターチルドレンと有観客コンサート(@大阪城ホール)を行いました(UNITE#1)。コロナ禍の下、観客数を減らして、歓声も制限し、ワクチン接種を義務とはせず接種者やPCR検査実施者にはステッカーをプレゼントしていました。ストリーム配信を見ましたが、コンサートの最後に、B’zの稲葉さんが、最大限の感謝の言葉と共に、「家に帰るまでがUNITEだから、よろしくお願いします」と、観客に向かって、懸命に頭を下げていました。

 

誰に指示されていなくても、こういう動きを、アーティストが率先してできることが、日本の国民性だと思いました。

 

(文責:大井)