心理学と勉強法 第10回 記憶のコツ 精緻化

心理学と勉強法 第10回 記憶のコツ 精緻化 その1

第10回は、記憶のコツ 精緻化について説明します。

精緻化とは、覚えるべき情報に関連する別の情報を付け加えながら覚えるという記憶戦略です。語呂合わせはとても単純な一例です。

生成効果

生成効果という考えがあります。覚えるべき情報やその関連する情報を自分で生み出すほうが、記憶がよくなるというものです。自分で生成することは、自分の中にある知識と関連した情報が符号化されるので、記憶戦略上有効との考え方です。

処理水準レベルが高そうですね。

受験勉強でよく耳にする精緻化について、英単語や元素記号の例などをいくつか紹介しておきます。

注:とても単純な例ですので、精緻化とは言えないレベルですが、簡潔にイメージしていただくために紹介します。

a. 有意味化

有意味化とは、覚えようとする情報を少しでも意味があるように加工することを言います。例えば、√5=2.2360679を覚えようとする際に、「富士山麓オーム鳴く」と言うゴロ暗記です。

また、覚える物事を自分や自分に近しい人などと関連づけるという方法も有意味化です。例えば、歴史的な出来事の中でも、自分が行ったことがあることの場所に関する情報はよく覚えている、ということがあります。

これは、私たちが最も関心を寄せるのは自分であるため、自然と深い情報処理が行われることになるという背景があります。生成効果を裏付ける内容ですね。

b. 物語化

物語化とは、系列的な情報を記憶するときに、情報を結び付けて物語を作って覚えるような精緻化の方法です。

例えば、化学で習うイオン化列(イオン化傾向の大きさの順に元素を並べた際の序列)の覚え方には「貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金」というのがあります。

これは、次のような元素を覚える際にストーリーにすることで、覚えやすくしたものです。

「貸そうかな」
貸そう(カリウム:K)か(カルシウム: Ca)な(ナトリウム:Na)、

「まああてにすんな」
ま(マグネシウム:Mg)あ(アルミニウム:Al)あ(亜鉛:Zn)て(鉄:Fe)に(ニッケル:Ni)すん(すず:Sn)な(鉛:Pb)、

「ひどすぎる借金」
ひ(水素:H2)ど(銅:Cu)す(水銀:Hg)ぎる(銀:Ag)借(白金:Pt)金(金:Au)

語呂合わせの内容は、重要ではありません。生成効果(=頭の中にある知識との結び付けを自分で生み出そうという努力)が記憶ネットワークを強くすることを理解してください。

【次回(第11回)テーマ 記憶のコツ 精緻化 その2】