心理学と勉強法 第14回 記憶のコツ 構造化 その3

心理学と勉強法 第14回 記憶のコツ 構造化 その3

第14回は、記憶のコツ 構造化 その3(最終回)です。

情報を構造化することで、検索の効率(思い出しやすい)も向上します。

物事に熟達している人と初心者とでは情報の構造化の質や量が異なるということについての実験例を挙げます。

物理学の熟達者(博士号を持つ物理学者)と初心者(学生)に対し、物理の問題に関連する20のラベルを見せて、そのラベルに関する問題の解き方を説明するように求めました。「斜面」という問題を解くことに関連して持っている知識を3分間で述べるよう求めた結果、次のような違いが出ました。

(斜面の問題について初心者と熟達者の持っている知識の構造(Chi et al.,1981))

 

初心者も斜面に関して多くの概念を関連づけていることがわかります。この初心者は「平面」、「積木」などの用語を述べた後に、「エネルギーの保存の法則」を指摘しました。一方、熟達者は、即座に「力の原理」、「エネルギー保存の法則」、「ニュートンの力の法則」を指摘しました。それと同時に、法則の適用条件も述べました。

初学者に比べて熟達者は、法則や原理とその知識の使い方が構造化されている(セットとなって記憶されている)、ということです。

みなさんが衣類を片付けるときに、できるだけ素早く引き出せるように、タンスの上段には上着、下段には下着と分けて収納することと同じです。あとで記憶を引き出し(検索)やすいようにしまっておくことで、記憶を効率的に検索することもできます。

われわれの毎日の仕事でも、課長さんに「必要な資料を出して!」と言われて、「はい、どうぞ」とすぐ資料を出せる人と、「えーっと、ちょっと待ってくださ~い」と、なかなか資料が出てこないタイプに分かれます。情報整理は、日ごろの行動にも表れています。

あなたの周りの方は、どういうタイプですか?

 

 

【次回(第15回)テーマ 記憶 まとめ(受験勉強のコツとして)】