心理学と勉強法 第16回 考えて(推論)わかる(理解)

心理学と勉強法 第16回 考えて(推論)わかる(理解)

第2章では、考えて(推論)わかる(理解)について説明します。

この章では、人間が考えること(思考)、わかること(理解)の認知心理学的メカニズムと受験勉強への活用方法について説明します。

人間が、考えて、理解するシステムは、認知心理学の中でも、さらに解明が難しい分野です。感覚・知覚・記憶の認知と対比して、高次の認知過程に分類されます。

わかることの難しさを毎日の受験勉強で痛感している人もたくさんいるでしょう。日常生活でも、わからないことが溢れています。ソクラテスは、無知の知を2000年以上前に喝破していました。

数学Ⅰ+Aまではなんとかわかるけど、数列や微積分になるとわからない。英作文で、解答を見れば、知っている英単語で表現しているのに、自分では浮かばない。 数学や英語だけではありません。国語(日本語、言語)は、心理学的解明がとても難しい分野です。

「数学や英語に比べて、日本語は、むつかしくない。日常生活では読み書きができている。受験国語(現代文)になったら、要約や作者の意図が問われて難しくなるけど、」という人もいるかもしれません。それは、私たちが日本語を生まれた時から、毎日の生活や学校で学習してきているからです。英語(第2言語)は、生活では学習していませんから、習得に努力が必要ですが、人間の脳には、母国語を習得する力は生まれながらにあります。その科学的な解明は認知心理学の重要な研究分野で、まだまだ未解明なことがたくさんあります。グーグル翻訳を使ったら、思わず吹き出しそうな英文和訳を返してきたという経験をした人もいるのではないですか?世界中の情報を網羅的に検索して瞬時に探してくれるグーグルでも、まだまだ太刀打ちできない分野です。言語を科学的に解き明かすことは、とても難しいことです。人間の脳はとても精緻に有効なシステムを持っている証拠です。

人の心を推し量ることも難しいですね。そばで赤ちゃんが泣いている。どうして?おなかがすいている?お腹が痛い?まったくわからないのに、そばにいるお母さんが、にっこりしてすぐにオムツを変えてあげたら泣き止んだ。

考えて理解することの難しさをイメージしてもらえましたか? 脳の神秘、奥深さです。

わかることとは、自分の糧になることです。食事でいえば、栄養になり、血肉になること。体づくりでいえば、筋肉がつくこと。

逆にいえば、わからないとは、自分の糧になっていない状態。認知心理学でいえば、長期記憶になっておらず、呼び出すことができないこと。わかるとは、知識になり、長期記憶になり、呼び出すことができることです。

考えて理解するという複雑な分野でも、認知心理学での解明が進んでいます。

次回から、まず、知識のモデルについて説明します。

【次回(第17回)テーマ 知識のモデル】