心理学と勉強法 第38回 動機づけ その2(内発的動機づけ)

第38回テーマは、動機づけ その2 内発的動機づけ です。

内発的動機づけの研究実験

1960年代以降、外発的動機づけの考え方への疑問から、新たな研究(内発的動機づけの研究)が盛んに行われました。このような研究がされるようになった背景には、動物も人間も、そもそも賞罰などの外からの刺激がなくても、主体的に刺激を求める存在のはずではないかという考え方があります。私たちの行動に対する欲求は、外部からの賞賛や報酬を得るために起こるのではなく、活動自体をしたいと思う欲求から起こるという考え方です。この欲求のことを「内発的動機」と言います。例えば、知的好奇心が挙げられます。

 

 

内発的動機づけに関連する実験に、感覚遮断の実験があります。人間を気持ちの良いベッドで寝かせて、外からの刺激を与えないようにする実験です。目には覆いを被せ、手にはカバーをしますが、お腹が空いたら食事を与えて、生理的な欲求はいつでも満たすような環境を作ります。

 

 

被験者は、最初の2日間ほど経つと退屈で耐えられなくなり、歌を歌ったり、独り言を言ったりして何とか耐えようとしますが、さらに時間が経過すると簡単な計算ができなくなり、嘘の話を信じてしまうようになるなど、正常な判断ができない状態になりました。

 

実験の結果、人間は適度な刺激を与えられていないと正常な活動ができなくなることがわかりました。これ以外の実験でも人間は新しい刺激を自ら求める存在であることが明らかにされていきました。

 

潜在学習

また、報酬がなくても学習が起こる潜在学習という現象があることも動物実験を通してわかりました。トールマンが行った実験で、ネズミに報酬なしで迷路から脱出させる実験を行いました。迷路に入れられたネズミはうろちょろとします。5日間ネズミに迷路を探索させたあと、ゴールに餌を置きました。すると、ネズミは素早く迷路のゴールに辿り着きます。ネズミは報酬が与えられていない間にも、迷路を探索し、迷路の構造を学習していたと考えられる結果となったのです。

 

ネズミの迷路実験

 

外発的動機づけを主張していた行動主義心理学者は、賞罰を与え、行動が変化することをもって学習が起こったと捉えていたわけですが、「学習は必ずしも外から観察できるわけではないこと、賞罰がなくとも学習は起こり得ること」が実験を通して提唱されました。

 

次回は、2つの動機づけ(外発的動機づけと内発的動機づけ)まとめについて説明します。

 

 

【次回(第39回)テーマ 動機づけ その3(2つの動機づけ まとめ)】