心理学と勉強法 第42回 行動を起こした結果の認知

第42回テーマは、”行動を起こした結果”の認知です。

何らかの行動を起こしたら、必ず結果が出ます。この結果をどのように受け止めるかによって、私たちのモチベーションは上下するという理論を紹介します。

 

原因帰属理論

ワイナーは、物事に成功・失敗した際に、その原因をどう解釈するかがやる気の高低に関係するという説(原因帰属理論)を提唱しました。例えば、定期テストの場合を想定してみましょう。結果が返ってきたときに、「あ〜、あんまり時間取れなかったからできなかった」とか「得意な分野だったからできたんだな」などのように、結果について、その原因を自分なりに解釈しているでしょう。

 

 

ワイナーは結果の受け止め方として「原因の所在」と「安定性」という二つの要素に分けて考えました。原因の所在とは、自分に関するものなのか、環境などの自分以外のものなのかということで、内的:外的の尺度で整理されます。安定性とは、変わりやすいものか、簡単には変わらないものかということです。安定的(変わりにくい):可変的(変わりやすい)の尺度で整理されます。

 

 

 

原因の所在(内的外的/安定的可変的)

上記の表では、自分の中にあり(内的)、変わりにくいものは能力です。変わりやすいものは努力です。能力はすぐに変わるものではありませんが、努力は時々で変わりやすいものです。また、自分の外にある原因(外的)で変わりにくいものは課題の困難度で、変わりやすいものは運です。例えば、テストの成績がよくなかったとき、その原因を「問題が難しすぎた」と思うことは”課題の困難度”、「たまたまそこやってなかったから」と思うことは、”運”ということになります。

 

 

ワイナーは、動機づけにおいて、やる気を出やすくするためには、成功にしても失敗にしても、外的な要因よりは内的な要因に帰属させること(=自分の誇りにつながる、自分で主体的に取り組める)、安定的なものよりは可変的なものに帰属させること(=どうせ変わらないとすれば、期待が高まらない)と考えました。すなわち、仮に失敗したとしても、原因を運や能力ではなく、努力に帰属させることができれば、次はどうすれば良いかと考えられるので、やる気が出てくるのだと考えました。この仮説は、いくつかの実験でも支持されています。

 

運と努力

 

 

東京オリンピック2022で、いろいろな選手の試合後のインタビューを見ましたが、敗者であるアスリートは、一様に、“ついてなかった(運)!や、とても自分はかなわない(能力や困難度)!”ではなく、(ライバルへの敬意とともに)自分の努力が足りなかったこと、次へのチャレンジに言及していました。勝者も、もちろん、(周囲への感謝とともに)「自らの苦しかった努力やコーチのサポート」を振り返っていました。

 

 

中でも、(オリンピック後しばらくたってからの)内村航平選手のインタビューがとても印象的でした。

「普通に努力は裏切られるということを知った」という心情を吐露すると同時に、「練習をやる以外ないです。やっぱり普通に努力は裏切られるというのを知ったからこそ、もっとやらなきゃいけないと思うし、やっぱり努力が裏切られることはないということは、また証明したいかなという。やっぱりあのときは、五輪の前はもうちょっとできたであろう、努力が裏切られたのではなく、自分が努力できていなかったんだというのを証明するために、世界選手権をやる感じなのかなと思います」

 

 

【次回(第43回)テーマ 行動を起こす主体意識】