「四季の創造 日本文化と自然観の系譜」ハルオ・シラネ、角川選書、2020年

日本人の自然観とは?

 

「日本は四季がはっきりしていて、自然が美しい。」

とはよく聞くことですし、私自身その通りだなと思っていました。

 

ところが、我々日本人が当たり前と考えているこの四季という概念が、自然を観察して自然発生的に生まれたものではなく、文学や美学において美を作り出すという意図をもって創られたものだとしたらどうでしょうか?

 

今回は、おそらく多くの日本人の人にとって当たり前と考えている四季という概念が、どのように生まれてきたのかについて考察している1冊をご紹介します。

 

 

著者

ハルオ・シラネ  (ハルオ・シラネ) 

 

1951年、東京生まれ。アメリカ東海岸で育ち、1974年、コロンビア大学卒業。1983年、同大学大学院にて博士号(日本文学)取得。コロンビア大学にて准教授、教授をつとめ、2013年より東アジア言語・文化学部学部長。1992年、『夢の浮橋「源氏物語」の詩学』(中央公論社)で角川源義賞、2001年『芭蕉の風景 文化の記憶』(角川叢書)で二十一世紀えひめ俳句賞石田波郷賞を受賞、2019年本書の英語原著で山片蟠桃賞を受賞。また同書を中心とするこれまでの業績に対して人間文化研究機構の第1回日本研究国際賞受賞。

 

構成

本書の構成は序論、結論を含め全9章で構成されています。また、日本語版に向けて、コロナ禍の状況について言及もされています。万葉集の時代から現代まで、日本人の自然観がさまざまな要素と相まって変化し、継承されてきたことが解説されています。

 

序論 二次的自然,気候,風景

第一章 歌題と四季の創造

第二章 視覚文化と和歌・連歌のかかわり

第三章 自然の屋内化――花と社会儀礼

第四章 田舎の風景――社会的差異と葛藤

第五章 季節を越えて――護符と風景

第六章 年中行事,名所,娯楽

第七章 季節のピラミッド,パロディ,本草学

結論 歴史,ジャンル,社会的共同体

 

本書を読んで

著者のハルオ・シラネ氏は東京で生まれ、父親の仕事の関係で1歳の頃から渡米し、アメリカで育たれました。日本語を使うこともなく、大学3年の時に大学で日本語の授業を取るまで日本語の読み書きもできなかったそうです。英語が第一言語になることを最優先して育たれたからだそうです。それが、ふとしたきっかけで日本の文学に出会い、研究をはじめ、今ではライフワークとなっています。まさに知的好奇心や研究への情熱がご自身の人生を切り開いた、「学問のすゝめ」の体現者だと思いました。高校で学ぶことは、こうした体現者たちの蓄積してきた知的遺産の一端です。何かに興味を持ったら追求していくと今勉強していることの広がりや奥深さが知ることができて面白いだろうと思いました。

 

 

文責:井口)