本の紹介: 佐藤達哉著「知能指数」(講談社現代新書, 1997)その1

頭がいいって、何?

「あいつ、頭いいなあ」「どうせ、頭悪いっし」など、頭がいい、悪いって、日頃簡単に使っていますが、頭がいいって、何のことでしょうか?関係する言葉として、知能指数(IQ)が高い(低い)という話題もよく取り上げられます。IQ160の天才少年とか、ホリエモンのIQは98?とか(注;TV番組での結果)

 

知能指数と頭の良さは違います。知能指数は知能テストで測定した結果にすぎません。でも、話題になり、気になる数字です。学問ノススメでも、入塾時に作成するYour Potentialレポート(一人ひとりの力を科学的に知る)で、心理テストや学力テストの一つとして、知能テストを行います。

 

今回は、知能指数に関する書籍の紹介です(2回シリーズの第1回)

 

 

著者について

佐藤達哉(さとう たつや)

(著書 及び 立命館大学研究者データベースより以下引用・一部改訂)

1962年、神奈川県生まれ。1985年東京都立大学卒業、東北大学文学部(博士)、福島大学助教授などを経て、現在 立命館大学 総合心理学部 学部長。専攻 文化心理学、質的心理学、社会心理学

現在は、カタカタ表記のサトウタツヤ として活躍されており、質的研究(数量的なデータに基づく量的研究に対して、言葉や行動などの質的な分析に基づく研究)に関する著作多数。以下、立命館大学教員紹介ページより

現在の専門分野を志した理由:「ほんとっぽいウソ」を研究している。社会の欺瞞を曝きたい、というのが基本。確かめもしないのにホントだと思うことが世の中には沢山ある。三歳児神話、 血液型神話、IQ神話、原発安全神話、裁判無謬神話・・・・。
高校生へのメッセージ:自分があることを信じているということは、それが正しいからではなく、文化的にすり込まれている可能性がある、ということを理解してほしい、もしくは理解するように努力してみてほしい

著書執筆時

現在

 

内容

「頭のよさ」とは何なのか。それは測れるものなのか。知能検査の成立、その後の歪んだ歴史、荒唐無稽なエピソードの数々―IQ神話を徹底検証し、知能観の見なおしを迫る(本書表紙より)

目次

第1章 身近なIQ

第2章 知能検査の成立

第3章 歪められたIQ

第4章 差別と偏見と

第5章 IQ神話を超えて

エピローグ IQは愛で救うこと?

以下、内容の説明

歴史上、知能を測ろうという様々な試みが行われてきているが、現代から見ると、滑稽な話も多い。20世紀初めに知能を測る要素として握力測定があったこと、80年前に、東大教授が「傑出人脳の研究」という報告書で、著名人の脳の重さの一覧表(ツルゲーネフ、夏目漱石、桂太郎など)を発表している。死後に脳の重さを測ってみたら重くなかったことが分かってしまい面目を失った大学教授の話などなど

20世紀初頭、フランスの心理学者ビネが、「知的に劣る子どもを判定して、その子供たちへの働きかけ・教育を行う」ために知能検査を創案。シモンと共同で開発したビネーシモン式検査法は、現在の知能検査の原型となり、世界的に広まった。その後、ドイツの心理学者シュテルンによる知能指数(IQ)(検査による精神年齢/実年齢の比)、アメリカの心理学者ウェクスラーによる知能偏差値(同年齢集団の中での相対的な位置づけ)が創案され、現在に至る。

歴史的には、知能検査は、帝国主義の高まりの中、移民制限や断種に代表される悪い意味での優生学的運動や人種差別に利用され、当初の目的を大きく逸脱し負の側面を残すこととなっていく。

知能偏差値として相対的な位置づけがなされる結果、使い方によっては、きわめて大きな負の結果をもたらす。知能という目に見えない、神秘的で複雑なものを数値化して比較対象とすることは、検査を受ける側からすれば不安で時には不愉快なものである。人種などの集団比較に利用されることで、偏見や差別を助長することもある。悪い意味での「IQ神話」を乗り越えるために、どのような認識や姿勢が必要と考えるか(*)という問題提起で結語。(*)頭の良さの定義を考える、多重知能論、独創性や創造性、EQ、そもそも人間をどう捉えるか

次回へ

今回は、書評として、内容を紹介させて頂きました。次回は、”頭の良さ、知能指数、知能検査について”、学問ノススメがどのように考えているかを説明させていただきます。

(文責:大井)