「銀河の片隅で科学夜話」全卓樹 朝日出版社 2020年
- 2021.11.12 | 書評 未来への学び(遠い未来)
寒い季節がやってきました
秋の夜長。年の瀬の始まりを迎え、今年も1年、早かったな と感じる季節です。
そんな季節に、ユニークなエッセイ本(科学エッセイ)「銀河の片隅で科学夜話」のご紹介。
著者
京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授。エッセイストとして、紹介の本で八重洲本大賞、寺田寅彦記念賞受賞。
以下はご本人のホームページより
南国土佐のリーゾート風大学で理論物理学の研究をしています。量子力学と社会物理学が現在の研究テーマです。
人生すべては、決して起きない何事かのための準備のように思える。
(ウィリアム・バトラー・イェイツ)
構成
5章、22話のエッセイですが、ユニークなのは、物理学者が書いた「科学エッセイ」ということ。
一日の長さは一年に0.000 017秒ずつ伸びている。3億5千万年前の1年は385日だった。500億年のちは、一日の長さは今の一月ほどになるだろう ~第1夜 海辺の永遠より~
パラレルワールド ~第8夜 エヴェレット博士の無限分岐宇宙~
じゃんけん、最初はパー、次はグー ~第9夜 確率と錯誤より~
自分で思い出せない夢をAIが見せる世界とは ~第14夜 思い出せない夢の倫理学~
アリは人類に匹敵する生物量(総生物資源の3割の質量)、社会的な知性を誇る生物!?~第19夜 アリたちの晴朗な世界~
〔天空編〕
第1夜 海辺の永遠 第2夜 流星群の夜に 第3夜 世界の中心にすまう闇 第4夜 ファースト・ラグランジュ・ホテル
〔原子編〕
第5夜 真空の探求 第6夜 ベクレル博士のはるかな記憶 第7夜 シラード博士と死の連鎖分裂 第8夜 エヴェレット博士の無限分岐宇宙
〔数理社会編〕
第9夜 確率と錯誤 第10夜 ペイジランク 多数決と世評 第11夜 付和雷同の社会学 第12夜 三人よれば文殊の知恵 第13夜 多数決の秘められた力
〔倫理編〕
第14夜 思い出せない夢の倫理学 第15夜 言葉と世界の見え方 第16夜 トロッコ問題の射程 第17夜 ペルシャとトルコと奴隷貴族
〔生命編〕
第18夜 分子生物学者、遺伝的真実に遭遇す 第19夜 アリたちの晴朗な世界 第20夜 アリと自由 第21夜 銀河を渡る蝶 第22夜 渡り鳥を率いて
本書を読んで
科学は不思議を解き明かす、でも、やっぱり世界は不思議につつまれている、と感じさせてくれる22話。1話15分程度、すき間時間で読める内容。夜空を眺めながら、スマホでGoogle検索をしながら、ふっと思い出して楽しくなる内容です。
「夜話と名乗ってはいるが、朝の通勤電車で、昼休みのひとときに、ゆうべの徒然の時間に、順序にこだわらず一編ずつ楽しんでいただければと思う。」~ 著者 はじめにより~
(文責:大井)