エドワード・デシ等『人を伸ばす力-内発と自律のすすめ』(新曜社、2012)

アメとムチ以外の動機づけ

人を動機づける時に、アメ(報酬)とムチ(罰)を使い分けるというのはよく聞きます。

その一方で、アメやムチがなくとも人は自らやる気を高め行動することもできます。自らやる気を起こすような動機づけを内発的動機づけと言います。

本書は、この内発的動機づけについて、エドワード・デシという心理学者が一般向けに解説したものです。人間が本来持っている「自ら学ぶ意欲・行動する意欲」などの自分を伸ばす力をいかに活性化するか、またどう育むかについて様々な研究や事例が紹介さています。


著者について

エドワード・デシ

米国ローチェスター大学の心理学教授で動機付け理論の大家です。「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の関係性を理論化しました。自律的決定が動機付けに影響を与える「自己決定理論」を提唱しました。

 

構成

4部13章から構成されています。

第1部(第2〜5章)では「自律性」と「有能さ」を高めることが内発的動機づけを高めることが解説されています。

第2部(第6〜9章)では「関係性」の重要性が解説されています。人間は社会に関わる際に、本人がたとえ望んでいないことであっても、行動を合わせることが求められます。その際に、周囲の関係者がいかに本人を支援するか、関わるかなどについて解説されています。

第3部(題10〜12章)では、どのようにすれば内発的動機づけを高められるかについてまとめられています。

第1章 権威と服従

第1部 自律性と有能感がなぜ大切なのか

 第2章 お金だけが目的さ

 第3章 自律を求めて

 第4章 内発的動機づけと外発的動機づけ

 第5章 有能感をもって世界とかかわる

第2部 人との絆がもつ役割

 第6章 発達の内なる力

 第7章 社会の一員になるとき

 第8章 社会のなかの自己

 第9章 病める社会のなかで

第3部 どうしたらうまくいくか

 第10章 いかに自律を促進するか

 第11章 健康な行動を促進する

 第12章 統制されても自律的に生きる

第4部 この本で言いたかったこと

 第13章 自由の意味

本書を読んで

本書の一部では自律性と有能感(自己効力感)がなぜ重要かと述べられています。そのなかで、人が内発的動機づけを高める際に、「自律性の感覚を伴わない有能感(自己効力感)もマイナスの効果をもたらす」と指摘されています。他者を支援するものの一人としてこの考え方は噛み締めたいと改めて思いました。

(文責:井口)