心理学と勉強法 第18回 手続き的知識(例:数学の解き方)獲得のモデル

心理学と勉強法 第18回

第18回は、手続き的知識(「どのように」の知識)、例えば泳ぎ方や自転車の乗り方、数学の解き方のような知識を獲得するモデルに関する説明です。手続き的知識を獲得するモデルには、プロダクションシステムやコネクショニスト・モデルがあります。

プロダクションシステム

プロダクションシステムは、条件(Condition)を満たす場合に、行為(Action)を実行せよというルール(プロダクションルール)に基づいて知識獲得が実行されるモデルです。コンピューターの情報処理はこのモデルです。情報の「条件照合(得られた情報を記憶と照合)-競合解消(ほかに選択肢がないかチェック)-実行」というアルゴリズムを用います。

プロダクション・システムの基本構造(出典:認知心理学 箱田裕司他著 有斐閣 2020年9月 P.202)

ルールの設定が単純なので、作成しやすいモデルです。一方で、ルールが単線的ですので知識全体の構造を把握しにくいという欠点があります。また、人間は情報処理を単線では行わず並行して行っているので、人間の認知過程を説明するには限界があります。が、認知過程を理解して、コンピューターなどで機械的に再現する意味で有益なモデルです。

コネクショニスト・モデル

コネクショニスト・モデルは、手続き的知識と宣言的知識の獲得モデルを統合するモデルとして考案されました。人間の脳が多様な情報をほぼ同時(並列)に処理していることから考え出されたモデルです。パソコンのCPUは1秒間に20億個の命令を実行できます。一方、神経細胞が活性化するには約0.03秒かかります。脳は一つの情報を順番(系列的)に処理するのではなく、同時(並列的)に処理しているようです。

コネクショニスト・モデルの例 (出典:認知心理学 箱田裕司他著 有斐閣 2020年9月 P.210)

コネクショニスト・モデルは、神経細胞の大規模な並列処理の相互作用の結果、ネットワーク全体として複雑な情報処理を実行し、知識を獲得するという考え方です。ネットワークは、情報処理後の出力と正答との誤差に基づいて、入力層→隠れ層→出力層という情報の流れと逆の順番で、神経同士の結びつきの強さを修正(=学習)し、正答を導きだす神経ネットワークが強化されていくという考えです。人間の脳神経系は、1000億個の神経細胞から構成され、個々の神経細胞は1万個の神経細胞と結びついています。学習によって、不要なネットワークが整理され、正解への道が、太く広く整備されるということです。

機械学習という言葉は、コネクショニスト・モデルによる脳神経の学習を機械にさせることで、複雑な情報処理(音声認識、画像認識など)をコンピューターにさせるモデルです。Googleが画像認識で猫を認識できた!という話題がニュースになりました(2012年)。

Googleが発表した論文(通称:Cat Paper)2012年

Googleの論文の解説記事

記憶の章で説明した物理学者の熟達者と初学者の違いについても、脳神経のネットワーク(道)が整備されているかどうかの違いとしてイメージできます。ゴールまで1本の太い道と、あちこちに迷い道をたどりながらゴールに行きつく細い道が、それぞれの脳にできているというイメージです。

        熟達者                 初学者

3. まとめ

脳は、知識をどのように獲得しているかは以下のようにまとめることができます。

1. ネットワークを構築している
2. 関連の強い知識ほどしっかりつながっている
3. 知識の獲得に、トライアンドエラー(学習)を繰り返している
4. 学習によって、太く広い道(ネットワーク)を作っている

【次回(第19回)テーマ 考える(推論)について 】