記憶のモデル 忘却 ~心理学と勉強法 2023~

記憶のモデル

学問ノススメのブログ 心理学と勉強法の中で、多くの皆さんから興味を持って頂いたブログを隔週で順番に紹介するシリーズです。今回は、「記憶」に関するブログの中で、忘却について、紹介します。

忘却

認知心理学では、忘却の原因について、時間の経過による記憶の強さの減衰、干渉(interference)、検索の失敗によるという考え方があります。

 

 

時間が経過すれば、記憶が薄れるというイメージはできますね。干渉とは、妨害のようなもので、記憶にとって何らかの障害になるようなことが影響するという考え方です。心理学では、意味のない単語の記憶を「睡眠を取った場合と取らなかった場合」で比較して、その実験結果で、「睡眠を取らなかった場合」の方が「睡眠を取った場合」よりも記憶の減退が激しかったことを、起きている間により多くの情報の影響を受けた(干渉)結果と考えました。

 

 

3つ目の検索の失敗とは、頭の中には記憶は残っているが、思い出すことに失敗している状態です。日常生活でも、”あるきっかけで思い出す”ことがあります。忘却とは、記憶が完全に消去されるような単純な現象ではないことを示しています。

 

 

心理学者達は、様々な実験で、その仕組みを探っています。例えば、記憶の再生に際して、手がかりが与えられていない場合には再生できなかった単語でも、手がかりが与えられると再生できる場合があることが判明し、再生できないことが忘却ではないこと、即ち記憶が完全に消去されたのではなく、検索の失敗と説明しています。その他にも、心理学者たちは、忘却には記憶した際の環境や感情の動きが影響することなど、記憶や忘却の仕組みをいろいろな実験で解明しようとしています。

 

 

人間の脳(心)のメカニズムは、コンピューターの記憶・検索のような単純な仕組みで制御できないということです。長期記憶においては、多くの干渉があるわけですから、時間の経過以外にも干渉が影響を与えることを理解しておくこと、干渉を受けても忘れないためにはどうすればいいのかという視点が効果的な学習には重要です。また、覚えていても思い出せなければ意味がないので、思い出しやすいようにしておくこと(検索の失敗が起こらない)が重要です。

 

 

私たちは、これを「強固な石垣を造る」ようなものだと考えています。攻撃されても。邪魔されても少々のことでは壊れない石垣を造る。そのためには、バラバラと石を積み上げるのではなく、造り方に工夫が必要そうです。さらに、壊れても修復しやすいように石を積み上げておくことも大切そうです。

 

 

次回は、ワーキングメモリーについて説明します。

 

 

(文責:大井)