記憶のコツ 構造化 ~心理学と勉強法 2023~

学問ノススメのブログ 心理学と勉強法の中で、多くの皆さんから興味を持って頂いたブログを隔週で紹介するシリーズです。今回は、記憶のコツ 「構造化 」について説明します。

 

構造化

記憶のメカニズムを考えると、記憶戦略として最も重要なことは、構造化です。情報が構造化されると、格段に理解が進み、記憶しやすくなり思い出しやすくなります。物事に熟達している人と初心者とでは構造化の仕方や量に雲泥の差があると言われています。構造化というものがどういうものなのか理解するために、2つの実験について紹介します。

 

 

構造化により記憶がしやすい

一つ目の実験では、2つのグループに分け、最初のグループでは28個の鉱物のリストをそのまま覚えるように伝えられました。もう1つのグループは”鉱物→金属→貴金属・普通の金属・合金”、”石→宝石・石材”と言ったように下の図で言えば上から下に徐々に伝えていきました。比較した結果、後者の方がより記憶していたということが分かりました。

 

 

構造化により思い出しやすい

2つ目は。物事に熟達している人と初心者では情報の構造化の質や量が異なるということについての実験例です。

物理学の熟達者(博士号を持つ物理学者)と初心者(学生)に対し、物理の問題に関連する20のラベルを見せて、そのラベルに関する問題の解き方を説明するように求めました。「斜面」という問題を解くことに関連して持っている知識を3分間で述べるよう求めた結果、次のような違いが出ました。

(斜面の問題について初心者と熟達者の持っている知識の構造(Chi et al.,1981))

 

初心者も熟達者も斜面に関して多くの概念を関連づけていることがわかります。違いは、初心者は「平面」、「積木」などの用語を述べた後に、「エネルギーの保存の法則」を指摘するなど、情報が整理できていません。一方、熟達者は、即座に「力の原理」、「エネルギー保存の法則」、「ニュートンの力の法則」を指摘しました。それと同時に、法則の適用条件も述べました。情報を構造化することで、検索の効率(思い出しやすい)も向上しています。

 

受験勉強でのヒント

 

受験勉強でも、まず原理や基本的な概念とその意味するところの理解が非常に重要です。学習を進める際に、ある問題に関連する知識について説明してみることで、その問題に対する構造的な理解度を確認できます。知識をインプットする際、まず学習する範囲の全体像をノートにマップで書いてみるという方法も有効な方法です。

 

(文責:大井)