記憶の3段階 その1 ~心理学と勉強法 2023~

記憶のモデル

学問ノススメのブログ 心理学と勉強法の中で、多くの皆さんから興味を持って頂いたブログを隔週で順番に紹介するシリーズです。今回は、「記憶」に関するブログの中で、記憶の3段階について、紹介します。

 

記憶の3段階

記憶の3段階(覚える、覚えておく、思い出す)の内、まずは、”覚える”について説明します。

短期記憶(ワーキングモデル)と長期記憶は、密接に関連して、覚える(符号化)、覚えておく(貯蔵)、思い出す(検索)という3つの段階で、情報処理を行っていると考えられています。思い出すこと(検索)を効果的に行う上では、ワーキングメモリの容量には限界があることが重要という点は前回の論点です。

 

 

それでは、3つの段階について順番に説明します。

 

覚える(符号化)

私たちは毎日多くの情報や刺激にさらされて生活をしています。しかし、それら全てに意識を向けることはしていません。コンビニで買い物をした際、レジの店員の鼻の形を後で聞かれても答えることはできません。ごく一部に注意を向けて、音や視覚などの感覚を使って対象を符号化(パターン認識)して短期記憶の中に取り組んでいます。例えば、数学の授業で先生が板書した数式をノートに書き写す場合を想像してみましょう。板書された数式をあなたはどのようにノートに書き写しているのでしょうか?実際に次の式をノートに写してみてください。

いかがでしたか?

 

頭の中で、「ワイ イコール ヨンブン ノ サン プラス 二エイ (カケル) エックス」と復唱しつつ、上記の数式と自分が書いたものに間違いが無いか見直しませんでしたか?この程度の数式ならば、みなさんは無意識に書き写すことができるようになっていますが、記憶できることは、注意を向けたことだけ。そして注意を向けるために、視覚や聴覚の感覚を駆使しているのです。数式を音に変換(頭の中で数字やアルファベットを音に変換)しつつ、板書された数式とチェックして(視覚的に符号化するという)、一時的に記憶したものをノートに書き写しているのです。

 

コンピューターに例えると、音韻ループ(復唱)と視空間スケッチパッド(黒板とノートを見ながら)を駆使して、記憶しています。

 

 

直観像という心理学用語があります。ある物を見た直後,あるいは数分後,ときにはその数年後にまでその事物のイメージが実在するかのように鮮明に再現されることで、映像記憶ともいいます。視覚的に符号化したものは急速に忘れさられますが、天才と称される方の中には、まるで映像のように記憶する能力を持っている方もいるとのことです。山下清さん(画家)、ムツゴロウさん(動物研究家)、三島由紀夫さん(小説家)は、そのような特殊能力を生かしてそれぞれの分野で活躍されたとのこと。

 

 

今回は、視覚と聴覚を駆使して記憶するというメカニズム、注意を向けたものしか記憶とならず、記憶されたものも短時間で消えていくものが大半であることを、理解して頂ければと思います。

 

次回は、記憶の3段階 その2(覚えておく、思い出す)について説明します。

(文責:大井)