心理学と勉強法 第30回 脳に正しい負荷をかける その2

心理学と勉強法 第30回

第30回のテーマは、脳に正しい負荷をかける その2 負荷を下げる工夫。前回のタクシー問題の続きです。

タクシー問題

ある町のタクシーの15%は青で、85%が緑色です。ある日の夕方、タクシーによるひき逃げ事件が起きました。目撃者によると、ひいたのは青のタクシーとのこと、ただし、現場が暗かったこともあり、目撃者が色を間違えるおそれがあります。この目撃者がどの程度正確かについて同様の状況下でテストしたところ、80%の場合は正しく色を判断できるが、20%の場合は逆の色を言ってしまうことがわかりました。証言通り青タクシーが犯人である確率は何%でしょうか?

 

 

正解は約41%。算出式は以下の通りですが、頭が混乱しますね。

 

算出式: ① 0.15 X 0.8 / (② 0.15 X 0.8 + ③ 0.85 X 0.2)

 

①は、青のタクシーを正しく「青」と証言する割合(数)

②は、①と同じ(青のタクシーを正しく「青」と証言する割合(数)

③は、緑のタクシーなのに、誤って「青」と証言する割合(数)

 

これを、円グラフで表すと以下の通りになります。

 

 

 

この円グラフは、緑のタクシーが多い(80%)状況では、20%の誤り(80%の正しさ)であっても、緑のタクシーを青と証言する数(割合)の大きさが無視できないこと(=事前確率の大きさ)を示しています。

 

人間は、事前確率を無視する傾向(バイアス)があるようです(タクシー問題でいえば、直感的に80%と考えてしまう)。上記の数式で求めることも、ベイズの定理のような数学的な知識が身についていないと、簡単には浮かびません。

 

ところが、視覚化する工夫で、わかりやすくなっていませんか?私は、もやもやしていた霧がすっきりしました。視覚化することで、脳の負荷を下げることができたからです。

 

数学の問題を解く際に、図示する・二次関数をグラフ化して考えてみる」ことや、「解法が浮かばないときには、問題を分解してまず到達できる手前の目標を考えてみる(心理学と勉強法 第25回 で説明した”ハノイの塔問題”)」ことも、すべて脳の負荷を下げる取組です。

 

容量が限られている人間の脳です。いたわってあげましょう。遠回りに思える工夫が、近道ということです。

 

次回は、受験勉強のコツ「脳に正しい負荷をかける」の2つ目のテーマとして ほどよいスキーマを創る(中程度の抽象度を持った知識)について説明します。

 

 

【次回(第31回)テーマ 脳に正しい負荷をかける その3 ほどよいスキーマを創る】