記憶の3段階 その2 ~心理学と勉強法 2023~

記憶のモデル

学問ノススメのブログ 心理学と勉強法の中で、多くの皆さんから興味を持って頂いたブログを隔週で紹介するシリーズです。今回は、「記憶」に関するブログの中で、記憶の3段階 (覚える、覚えておく、思い出す)その2 ”覚えておく、思い出す”について説明します。

覚えておく

短期記憶として脳に取り込まれた情報はどの程度(量と時間)覚えていられるでしょうか?それほど多くありませんし、長くもありません。量については、数であれば7±2程度だと言われています。メモリースパン(記憶範囲)と言います。メモリースパンは子どもと大人ではそれほど差が無いと言われています。

 

 

電話番号や郵便番号の間に「-」がある理由は、このメモリースパンを利用し、少しでも覚えやすいようにする工夫です。例えば、次の数字の場合どちらが覚えやすいですか?どちらもb.の方と感じるのではないでしょうか?

a. 0924069465 b. 092-406-9465

a. 8100042     b. 810-0042

以下の図を2〜3秒見た後、再現してもらった場合、覚えておけるのは点が6つ程度という実験もあります。

 

  出典:市川伸一『勉強法の科学-心理学から学習を探る』

 

時間についても、短期記憶として覚えたことはすぐに忘れることが特徴です。すでに覚えていたことが、新しく入ってきたことと置き換わり、元の情報を思いだせなくなるということがその理由です(忘却で説明した“干渉”)。脳のCPU(演算処理装置)の容量には限界があります。注意を向けた事象は短期記憶されますが、一度に多くのことを覚えていられないこと、すぐに忘れてしまうという特徴があります。

思い出す(検索)

長期記憶として覚えたことは思い出すことができますが、覚えていることが増えれば増えるほど、思い出すのに時間が掛かるという性質があります。コンピューターで、データが増えれば増えるほど、データを呼び出す時間がかかるのと同じです。コンピューターの場合は、容量をあげることやデータを削除することで、検索時間を短くできます。

 

 

人間の記憶の容量には限界があります。思い出す(検索)ために使える時間にも制限があります。忘却は、そのような人間の能力、記憶メカニズム、”思い出すべきことを思い出しやすくしている”、とても精巧なメカニズムと考えられています。コンピューターは、データ整理や消去により、検索時間を短縮しますが、人間は自動消去することで効率をあげています。検索しやすくするために、余計な情報を保存しない、データの検索がやりやすい保存方法を人間は備えているということでしょうか。そのため、学習、特に受験勉強のような学習の場合には、データ(記憶)を効率的に検索(思い出す)ことが、大切になってきます。

 

次回は、記憶のコツ 処理水準モデルについて説明します。

 

 

(文責:大井)