心理学と勉強法 第1回 なぜ心理学が勉強に重要か
- 2021.03.2 | 心理学と勉強法 高校生・受験生の学び(現在)
なぜ心理学が勉強に重要か
学びとミライでは、これから、高校生のみなさん、大学受験に取り組んでいるみなさんに、心理学と勉強法に関するコラムを毎週連載します。
はじめに
まず、なぜ、心理学が勉強に重要かを説明します。
心理学は、こころの学問ですが、勉強にどのようにかかわっているのでしょうか?
教育心理学、学習心理学、認知心理学、社会心理学、臨床心理学など、学習・教育・学校にかかわる心理学があります。
これらの学問は、どのように知識や学力、能力が育まれていくのか、そのプロセスで教育はどのようにかかわれば効果があるのか、社会や学校はどういう役割を果たすのかなどを、考える学問です。
こころを知ることは、とても奥深く、広がりのあるものです。
心の中は宇宙と同じ、広くて深い
ある教育者が、小学生に「心の中は、宇宙と同じように広くて深いんだよ」という説明をしていました。複雑なこころの動きを解明することは容易ではありませんが、先人の努力のおかげで、いろいろなことがわかってきています。
本編では、心理学が解明してきた学習や教育研究の中で、特に、認知理論(認知心理学)と教育理論(教育心理学)を中心に説明します。
受験勉強に取り組んでいるみなさんにとって。学習における人間のこころの知的なメカニズム(認知)を知ることが、意味があるからです。また、教育を効果的に進める仕組みがわかることが、自習の質をあげることにもつながるからです。
認知心理学
認知心理学は、コンピューターの発達と呼応して、60年以上前から発展をしてきました。人間をコンピューターと同じように、情報処理システムとみなすという考え方が基本にあります。それまでは、われわれの内的なこころの活動を解明する心理学では、こころの動きをブラックボックス的に扱うか、逆に、客観的に観察できる行動を対象として法則化することをその役割と考えていました(行動主義心理学)。
しかし、人のこころの仕組みは、すべてが観察できるほど単純ではありません。また、こころの仕組みを内的なもの(ブラックボックス)として理解することは、科学的とは言えない側面があります。そういう中で発展してきた心理学が認知心理学です。知的情報処理のしくみを明らかにしようという取り組みです。
コンピューターの情報処理の仕組みが、人間のこころの内的な活動を解明するヒントになったこと、さらには、人間のこころ(脳)の仕組みが、情報処理技術の発展に伴い、見える化できたり、大量のデータ処理でモデル化できるようになったりしたことが、貢献しました。
人の心については、今も解明されていないことが、たくさんあります。神秘的なものとも言えます。一方で、科学的な解明が進んでいる分野でもあります。本編では、科学的に解明されている知識を中心に説明します。
次回から、勉強法と認知心理学について、学習のメカニズムを順番に説明し、そのメカニズムを活用した勉強法を紹介していきます。