心理学と勉強法 第8回 記憶の3段階 その2

心理学と勉強法 第8回 記憶の3段階 その2(覚える、覚えておく、思い出す

第8回は、記憶のモデル 「記憶の3段階(覚える、覚えておく、思い出す)」その2  ”覚えておく、思い出す”について説明します。

覚えておく

短期記憶として頭に取り込まれた情報は一体どの程度(量と時間)覚えていられるでしょうか?

それほど多くありませんし、長くはありません。

量については、数であれば7±2程度だと言われています。メモリースパン(記憶範囲)と言います。メモリースパンは子どもと大人ではそれほど差が無いと言われています。

電話番号や郵便番号の間に「-」がある理由は、このメモリースパンを利用し、少しでも覚えやすいようにする工夫です。例えば、次の数字の場合どちらが覚えやすいですか?

a. 0924069465 b. 092-406-9465

a. 8100042     b. 810-0042

どちらもb.の方と感じたのではないでしょうか?

時間についても、短期記憶として覚えたことはすぐに忘れることが特徴です。これは、すでに覚えていたことが、新しく入ってきたことと置き換わり、元の情報を思いだせなくなるということがその理由です(忘却で説明した“干渉”)

また、時間が経過したことで、忘れるということもあります。新しいことを記憶した際に、繰り返し復唱したり見直したりしないと(リハーサル)忘れることがよくあります。

例えば、電話番号を調べて電話をかける時、電話をかけるまでは電話番号を覚えていますが、電話を終えた後は、番号を覚えていません。これは、電話中に電話番号を復唱(見直し)しなかったことが原因です。

次に、視覚を使った場合の例を紹介しましょう。以下の図形を2〜3秒見た後、その図形を再現してもらった場合、一度に覚えておけるのは点が6つ程度だということがわかっています。

  出典:市川伸一『勉強法の科学-心理学から学習を探る』

短期記憶はこのように、一時的に注意を向けたものを記憶する際に使われるのですが、一度に多くのことを覚えていられないということと、すぐに忘れてしまうという特徴があります。

思い出す(検索)

長期記憶として覚えたことは、探して思い出せますが、覚えていることが増えれば増えるほど、探し出し思い出すのに時間が掛かるという性質があります。

コンピューターで、データが増えれば増えるほど、データを呼び出す時間がかかるのと同じです。コンピューターの場合は、容量をあげることやデータを削除することで、検索時間を短くできます。

人間の記憶の容量には限界があります。思い出す(検索)ために使える時間にも制限があります。忘却は、そのような人間の能力、記憶メカニズム、思い出すべきことを思い出しやすくしている、とても精巧なメカニズムと考えられています。

検索しやすくするためには、余計な情報を保存しない、データの検索がやりやすい保存方法を人間は備えているということでしょうか。

【次回(第9回)テーマ 記憶のコツ 処理水準モデル】